第12回|番外編

「さて、このコーナーも今回で12回目。大体月一で更新してきたと考えればもう一年経っちゃいましたよ。アッという間でしたね」

「やっと最終回?

「とりあえず一旦の区切りとして今回は番外編。車の整備にまつわる、本当にあったウソのような話を紹介したいと思います。題して『バニラアイスにアレルギーを持つ車』

おまいはなにをゆーてるのだ

「バニラアイスと車??どーゆーこと??」

ドライバーがバニラアイスを買った時だけ何故かエンジンが掛からなくなる車の話だよ。ちなみに外国で実際に起きた実話だそうな」

「ちょっと興味が湧いてきた」

「アメリカのゼネラルモータース(GM)という会社の『ポンティアック』という車がある。ある日、GMの開発部にこの車のオーナーから一件の苦情が入ったんだ。曰く、
「我が家は夕食の後にアイスクリームを食べる習慣があり、いつも私が行きつけのアイスクリーム屋に車で買いに行くのだが、毎回バニラアイスを買った日に限り、帰りにエンジンが掛からない。他のアイスを買った時には何も問題ない。信じられない話かもしれないが、本当にバニラアイスを買った時だけなのだ。オマエんとこの車は一体どーなっとんのぢゃ。バニラに恨みでもあるんか」と」(かなり誇張)

ンなアホな

「アイスクリームが車のエンジンに影響を与えるなんてあり得る話なのかしら……ヘンな電波出してるとか?

あるワケねーじゃん

「じゃあ何が原因だったの」

「話を聞いたエンジニアも当初はさすがに懐疑的だった。バニラにアレルギーを持つ車なんて論理的ではないからね。そこでオーナーと共に実際にその車に乗って、件のアイスクリーム屋に乗りつけ、試しにバニラアイスを買ってみたんだよ」

「そしたら?」

「ウソやん………」

「そんなはずはないと、彼はその後何度も検証を繰り返したそうな。その日はチョコレートアイスだった。車は普通に始動した。翌日はストロベリーを注文した。やっぱりエンジンは始動した。そして3日目に再びバニラアイスを購入すると―――なんとエンジンが掛からなかった。マジ、バニラの時だけに起きる現象だったんだ」

「派遣されたエンジニアは諦めずに原因究明に取り組んだ。車が問題を起こす前後の気温、湿度、時間帯、駐車位置など―――車内外のあらゆる環境データをかき集めたんだ。結局原因は何だったと思う?」

「さすがにバニラは関係なかろうもん?」

「いや、あった。
というか、ヒントはアイスクリーム屋の店内レイアウトにこそあった

「どゆこと?」

「そのアイス屋はね、多種多様なアイスを店の奥のカウンターに並べて販売していたんだけど、
一番人気で回転率の高いバニラアイスだけは店頭にケースを置いて手早く提供できるようにしていたんだ。
さて、ここで出てくる”差”とは何だろう?」

「判った!その店頭のケースだけがエンジンかからなくする未知のウィルスに感染していたんだ
ね!

「そんな特異に過ぎるウィルスが存在するなら逆に見てみたいわ」

「他のアイスとの差があるとすれば、提供までに掛かる……時間?」

いやよーわからんて

「この車、オーナーが気付いてなかっただけで実はエンジン切るたびに『ベーパーロック』という熱に起因する不具合が毎回起きてたんだ

「ま、毎回?」

「そう。フューエルパイプの中に熱膨張による気泡が発生して燃料供給が妨げられる現象。でもこのトラブルはエンジンがある程度冷却されれば自然に消散するものだった。エンジン切って、普通にアイスを買って、店を出る頃には消えているので問題なく始動できる。
バニラアイスだけ他のアイスと比べて早く買えてしまうがゆえに車に戻るまでの時間が短くエンジンが冷え切らない。結果ベーパーロックが再始動を阻害するという結果に繋がってたんだ」

これはまあ、かなりレアケースだとは思うけど。
少なくとも機械整備においては、一見オカルトじみた現象も調べればちゃんと化学的・物理的に説明がつくのだという好例ですね」(ソース:http://beza1e1.tuxen.de/lore/allergic_car.html)

「まあ大抵の場合はそーだわな」

「僕の実体験でもこんなことあったよ。
昔、とあるお客さんがモータース経由で購入した新車の軽自動車が、帰宅して車庫に停めて確実に鍵をかけた筈なのに、その後車のところに行ってみるといつの間にか鍵が開いてるという事が続いたんだ」

「ああ……なるほど」

「運転者が鍵かけた後、ガレージから一旦外に出て玄関から家に入る。玄関の中は電波の有効通信圏内なので”キーを持つ者が近付くだけで開錠される”というスマートエントリーの特性が適用されてしまったのではないかと。実際、キーの保管場所を変更したらその現象は起きなくなったからね。
”事象”には必ずその発生までに介在する”過程”と”原因”があるのよ」

「そもそも”近付くだけで勝手に鍵が開く”ってこと自体が魔法みたいなものなんだから、それが意図せぬタイミングで誤作動起こしたなら本質的には幽霊の仕業と変わらないわよ」

「突出して便利なものにはそれ特有の副作用もあるってことかな。
車もスマホもAIもどんどん進化して現代の生活は本当に便利になった。”無いと不便”というレベルではもはやなく、それが無いと落ち着かない、何も出来ないという人が増えてきたように思う」

「スマホなんかはそうよね」

「そーゆーTACさんはナビ無しでも大丈夫な人なんですか?」

(一応、おしまい★)

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