
第12回|番外編

25歳
慢性金欠症

22歳
急性突発型金欠症

年齢不詳
後天性免疫不全金欠症
じどうしゃのしくみ
|第12回|
番外編

「さて、このコーナーも今回で12回目。大体月一で更新してきたと考えればもう一年経っちゃいましたよ。アッという間でしたね」

「いやクソ永かったわ」

「やっと最終回?」

「とりあえず一旦の区切りとして今回は番外編。車の整備にまつわる、本当にあったウソのような話を紹介したいと思います。題して『バニラアイスにアレルギーを持つ車』」

「おまいはなにをゆーてるのだ」

「バニラアイスと車??どーゆーこと??」

「ドライバーがバニラアイスを買った時だけ何故かエンジンが掛からなくなる車の話だよ。ちなみに外国で実際に起きた実話だそうな」

「ちょっと興味が湧いてきた」


「アメリカのゼネラルモータース(GM)という会社の『ポンティアック』という車がある。ある日、GMの開発部にこの車のオーナーから一件の苦情が入ったんだ。曰く、
「我が家は夕食の後にアイスクリームを食べる習慣があり、いつも私が行きつけのアイスクリーム屋に車で買いに行くのだが、毎回バニラアイスを買った日に限り、帰りにエンジンが掛からない。他のアイスを買った時には何も問題ない。信じられない話かもしれないが、本当にバニラアイスを買った時だけなのだ。オマエんとこの車は一体どーなっとんのぢゃ。バニラに恨みでもあるんか」と」(かなり誇張)

「ンなアホな」

「アイスクリームが車のエンジンに影響を与えるなんてあり得る話なのかしら……ヘンな電波出してるとか?」

「あるワケねーじゃん」

「じゃあ何が原因だったの」

「話を聞いたエンジニアも当初はさすがに懐疑的だった。バニラにアレルギーを持つ車なんて論理的ではないからね。そこでオーナーと共に実際にその車に乗って、件のアイスクリーム屋に乗りつけ、試しにバニラアイスを買ってみたんだよ」

「そしたら?」

「ホントにエンジンが掛からなかったんだ」

「ウソやん………」

「そんなはずはないと、彼はその後何度も検証を繰り返したそうな。その日はチョコレートアイスだった。車は普通に始動した。翌日はストロベリーを注文した。やっぱりエンジンは始動した。そして3日目に再びバニラアイスを購入すると―――なんとエンジンが掛からなかった。マジ、バニラの時だけに起きる現象だったんだ」

「なにそれこわい」

「派遣されたエンジニアは諦めずに原因究明に取り組んだ。車が問題を起こす前後の気温、湿度、時間帯、駐車位置など―――車内外のあらゆる環境データをかき集めたんだ。結局原因は何だったと思う?」

「さすがにバニラは関係なかろうもん?」

「いや、あった。
というか、ヒントはアイスクリーム屋の店内レイアウトにこそあった」

「どゆこと?」

「そのアイス屋はね、多種多様なアイスを店の奥のカウンターに並べて販売していたんだけど、
一番人気で回転率の高いバニラアイスだけは店頭にケースを置いて手早く提供できるようにしていたんだ。
さて、ここで出てくる”差”とは何だろう?」


「判った!その店頭のケースだけがエンジンかからなくする未知のウィルスに感染していたんだ
ね!」

「そんな特異に過ぎるウィルスが存在するなら逆に見てみたいわ」

「他のアイスとの差があるとすれば、提供までに掛かる……時間?」

「大ぴんぽん!正解は”駐車時間”の差だったんだよ」

「いやよーわからんて」

「この車、オーナーが気付いてなかっただけで実はエンジン切るたびに『ベーパーロック』という熱に起因する不具合が毎回起きてたんだ」

「ま、毎回?」

「そう。フューエルパイプの中に熱膨張による気泡が発生して燃料供給が妨げられる現象。でもこのトラブルはエンジンがある程度冷却されれば自然に消散するものだった。エンジン切って、普通にアイスを買って、店を出る頃には消えているので問題なく始動できる。
バニラアイスだけ他のアイスと比べて早く買えてしまうがゆえに、車に戻るまでの時間が短くエンジンが冷え切らない。結果ベーパーロックが再始動を阻害するという結果に繋がってたんだ」

「ほっときゃ直るのに、待機時間が足らなかっただけか」

「これはまあ、かなりレアケースだとは思うけど。
少なくとも機械整備においては、一見オカルトじみた現象も調べればちゃんと化学的・物理的に説明がつくのだという好例ですね」(ソース:http://beza1e1.tuxen.de/lore/allergic_car.html)」

「まあ大抵の場合はそーだわな」

「僕の実体験でもこんなことあったよ。
昔、とあるお客さんがモータース経由で購入した新車の軽自動車が、帰宅して車庫に停めて確実に鍵をかけた筈なのに、その後車のところに行ってみるといつの間にか鍵が開いてるという事が続いたんだ」

「なにそれこわい」

「これも家のレイアウトが関連していたと思われる事例。このお客さんの家は家族が出入りする玄関口と車庫が隣接しててね。いつも車のスマートキーを引っ掛けてる薄い壁一枚のみで隔てられていた。
つまりキーの保管位置と車の駐車位置が非常に近く、スマートキーが常時通信できちゃう状態だったんだ」


「ああ……なるほど」

「運転者が鍵かけた後、ガレージから一旦外に出て玄関から家に入る。玄関の中は電波の有効通信圏内なので”キーを持つ者が近付くだけで開錠される”というスマートエントリーの特性が適用されてしまったのではないかと。実際、キーの保管場所を変更したらその現象は起きなくなったからね。
”事象”には必ずその発生までに介在する”過程”と”原因”があるのよ」

「判ってしまえばシンプルな話よね」

「そもそも”近付くだけで勝手に鍵が開く”ってこと自体が魔法みたいなものなんだから、それが意図せぬタイミングで誤作動起こしたなら本質的には幽霊の仕業と変わらないわよ」

「突出して便利なものにはそれ特有の副作用もあるってことかな。
車もスマホもAIもどんどん進化して現代の生活は本当に便利になった。”無いと不便”というレベルではもはやなく、それが無いと落ち着かない、何も出来ないという人が増えてきたように思う」

「スマホなんかはそうよね」

「スマホ無かったら私生きていけないかも」

「便利なツールが手元にあるならその恩恵は大いに享受すればいい。我慢する理由なんか無い。
でも、現代人はあまりにもそれに依存し過ぎてはいまいか?と思うことはある」

「急に何だよ」

「僕らが子供の頃は友人宅の電話番号とか20件くらいは記憶できてたのに、今じゃ自分ちの番号すらソラで言えない人のなんと多き事か。読めても書けない漢字のなんと多き事か。全部パソコンやネットが普及してからだ。使わない筋肉や感覚は急速に衰える。環境は進化したが、人間個々の性能は確実に退化している!」

「さすがにそれは言い過ぎなのでわ」

「大昔は自分自身の力しか頼るものが無かったゆえに研ぎ澄まされていた五感。現代人はその幾つかを文明の利器に代行させて生きているようにも見える。スマホを持って、ネットに繋がった状態でようやく一人前の人間として機能するんだよ。つまり、それらを取り上げられてしまった君らは”ニンゲン未満”ということじゃないか?人として”足りてない”存在と言えるのではないか?!」

「おっさんもちつけ」

「落ち着けるかベケーロウ。いいか、電気もネットも永遠にその存在が保証されたものではないぞ。戦争や災害で容易く寸断される危ういオプションに過ぎない!金も名誉も取り除いた素っ裸の自分がヒトとして足る存在かどうか、常に意識しておく必要があるのだ!計算機が無いと掛け算も出来ない奴など社会に出てこられても迷惑だ!ナビが無いと目的地に辿り着けない奴など使い物にならない!それらはいつでもどこでも誰にとっても永遠にそこに在るものではないからだ」

「自動車の話はどこ行ったんだよ」

「そーゆーTACさんはナビ無しでも大丈夫な人なんですか?」

「決断力と行動力のある方向音痴です!」

「くたばれ」
(一応、おしまい★)

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