
第2回|エンジンのはなし【その1】

25歳
VIPは好きだが中身はあまり興味なし。

22歳
VIPもエンジンもまるで興味なし。

年齢不詳
広報もライターも素質なし。
じどうしゃのしくみ
|第2回|
エンジンのはなし
(その1)

「さあ2回目です。ALESS広報のTACです。早くも多くの方が全くついて来てない気もしますが、前回に引き続きガソリンエンジンの話をしていきましょう」

「10行くらいに簡潔にまとめてください。柴木です」

「10文字以内にまとめてください。のまるです」

「おまいらケンカ売っとんか(12文字)」

「貴方、ハナシが長いのよ。ガソリンの爆発を使ってエンジン回すんでしょ? どうやったら連続で安定した爆発を得られるか、って話ですよね。いいからとっとと解説してください」

「そうそう。とっとと、さっさと」

「(こいつら、いつか軽トラで後ろから軽めに轢いて差し上げたる…)。えーー、エンジンを安定して爆発させるには以下の3つの条件が必要です。
1)良い火花
2)良い混合気
3)良い圧縮
どれが欠けてもいけません」

「火花はまあ分かるけど……他のがよくわからん」

「火花は分かりやすいよね。ガソリンに火をつける役です。部品名はスパークプラグといいます。プラグの先にはちょっとだけ隙間を設けた端子があって、高圧電流が流れるとパチッと火花が飛びます。端子間に小さな落雷が起きるんですよ。これが混合気に引火するわけ」


「混合気って?」

「重要なのは電流を流すタイミングでね。どの瞬間に、どのシリンダのプラグをスパークさせるか、これを決めているのが『タイミングベルト』とか『ディストリビュータ』という部品なのですが、まあこの辺は知らなくてもイイっす」

「だから混合気とは何やっつーとるやろがい」

「”混合気”ってのが何かというと、ガソリンと空気が混ざり合った霧のような状態の燃料のことを指します。ガソリンだけではダメなんです。理想的な割合で空気と混ざってないと、メラメラ燃えるだけで、爆発って起きないんですよ」

「へえ、意外」

「逆に言えば、理想的な割合で空気と混ざってさえいれば、ガソリンじゃなく、小麦粉でも爆発は起きます。よく炭鉱事故の原因になる”粉塵爆発”というやつですね。ガソリンと空気が理想的な割合で混ざった霧化状態の混合気を、エンジンのシリンダの中に送り込む装置がキャブレターとかEFIとか呼ばれるものです。どう違うのかというと、完全にカラクリのみで動くか、電気制御かの違いだと思ってください」

「口の中に水含んで、ブフーーーッと吹き出すような感じかな?」(例↓↓↓)


「うん…まあ…概ね正しい…かな…。そして、この霧化が不十分だと着火不良を起こし、シリンダ内はガソリンでベタベタになって余計に火がつかなくなります。これがいわゆる”カブった”状態です。気温が低い時とか霧化は悪いんですよ」

「エンジンがカブった…は聞いたことあるかも。じゃあ最後の”圧縮”って?」

「混合気ってね、そのままでも爆発はするけど、その混合気がムギュウゥウゥウゥウゥウゥ~ッと圧し潰されていればいるほど、より強い爆発力を生むんですわ」

「まあそれは分かる気が」

「ターボってあるじゃん。あれはチャージャー(過給機)という機械を使ってシリンダの中に無理やり空気を押し込む仕組みです。10の容量の入れ物の中に、10以上の空気を強引に詰め込んでから圧縮すれば、通常よりさらに強い爆発力が期待できる。このチャージャーを駆動するのに、排気ガスの力で回るタービン(プロペラみたいなやつ)を利用するのがターボチャージャー。他に機械式のタイプもあります。そちらはスーパーチャージャーと呼ばれたりしますが、本来、”スーパーチャージャー”は過給機全般を指す総称なんですけどね」

「なるほど、わからん」

「とにかく混合気はギューッと圧縮しなきゃいけないの! これは物理的にピストンを利用してます。ピストンはシリンダの中で上下してるんだから、一番下の時にシリンダ内に混合気を入れて密封後、ピストンが上に上がれば容積は何分の1にもなりますから、スゲー圧縮されるわけです。…どうやってピストンを上に上げるのかって?」

「聞いてない」

「そこは聞いとけよ」

「聞いてない」

「(黙殺)、当然、前の爆発の勢いを利用するんですよ。エンジンが回り続ける限り、一つ前の爆発が次の爆発の圧縮を準備してくれる。じゃあ、その”前”が存在しない――、つまり、エンジン始動前の最初の圧縮はどうやって作ってると思います?」

「あ、もしかして…」

「そう! それがスターターの役目ですよ。キーを回したときにキュンキュンキュンと音を立てるアレです。一発目の圧縮だけは機械を使って無理やりクランクを回すんです」

「なるほど、わからん」

「(コノヤロウ…)、バッテリーって、ぶっちゃけこのスターターを回すためだけに存在するんですよ。一旦エンジンがかかっちゃえば、使った分の充電も、ライトやスパークプラグ、その他の全ての電子装備も、全てオルタネータという発電機で賄うのでバッテリーを外しちゃっても大丈夫。逆にエンジンが掛かってない(発電していない)状態で電気を使ってるとバッテリーの蓄電分を消費しちゃう」

「バッテリー上がりね」

「バッテリーが上がるとスターターが回せなくなるから、この最初の圧縮を作れない。だから、いくらガソリンが入っててもエンジンがかかんない。エンジン回転の仕組みを順序を追ってまとめるとこうです」

- 空気を吸う。
- ガソリンと空気を混ぜる(混合気)。
- ピストンが下に下りるタイミングでインテークバルブ開。混合気がシリンダ内に吸い込まれる(もしくはインジェクターで噴射)。
- インテークバルブ閉。ピストン上昇。圧縮。
- スパークプラグが点火。爆発。ピストンが下に押される 。
- クランク回転。ピストンが上に上がる。
- エキゾーストバルブ開。排気ガスがマフラー方面へ押し出される。
- エキゾーストバルブ閉。インテークバルブ開。ピストン下がる。
- 次の混合気吸入。(※これを繰り返す)

「このタイプのエンジンを4サイクルエンジンと呼びます。1回の爆発でピストンが2往復(つまりクランクは2回転)してるよね。ピストン下がって『吸入』、上がって『圧縮』、『爆発』で下がって、また上がって『排気』、この4つの行程を踏むからです」

「なるほど」

「各機構が完璧なタイミングで連動しているからこそ成るシステム。もしタイミングベルトという部品が切れると、そのタイミングがめちゃくちゃになります。車種にもよりますが、ピストンが一番上に上がった時には本来閉じてなきゃいけないバルブが開いたままになり、ピストンに当って「突き上げ」という最悪なケースになる事も。これ、全交換の大修理となります。だからタイミングベルトは10万kmで替えとけ、と言われるンす」

「点検整備は大事ってことね」

「怠ると後で高くつくからね。ALESSでも熟練のスタッフがやってくれるよ」

「はい、もうおなかいっぱいです。エンジンの話はよく分かりました。ぼんやりだけど。混合気のようにフワフワだけど」

「分かってねーぢゃねえか。いや待って。エンジンの話はまだもう少しだけ続くんじゃ」

「まだあんのかよ」
(次回につづく)
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